「妊娠したら卵は食べないほうがいいですか?」 妊活が実を結び、めでたく妊娠された方からこのようなご質問をいただきました。
「卵はビタミンAが多く胎児の奇形につながりやすいので、妊娠したら卵は控えたほうがよい」という話を耳にされたそう。現在は卵を少し控えていらっしゃるとのことです。
卵を食べると胎児が奇形に!?
妊娠中または妊娠を希望する女性がビタミンAをとり過ぎると、胎児の奇形を引き起こす可能性があるため、過剰摂取をしないよう厚生労働省から注意喚起がされています。
そこで気を付けたいのがレバーになります。レバーの中でもとくに鶏レバーと豚レバーには大量のビタミンAが含まれます。
詳しくは、妊活中、妊娠中はレバーを食べちゃダメって本当?をご覧いただきたのですが、たとえばレバーの焼き鳥は1串に5-6個ささっており、これを2個食べただけで一日の上限を超えるビタミンA量を含むほど。
ご質問くださった方は、卵にもビタミンAが多いと耳にしたそう。
ビタミンAの上限量は1日2,700μgですが、卵は1個(50g)に含まれる量は105μgです。
ちなみに100gで比べると、卵は210μg、鶏レバーは14,000μg、豚レバーは13,000μgなので、桁が2ケタ違います。
ということで、卵はとくに気にしないで召し上がっていただいて大丈夫です。
卵を食べると子供がアレルギーになる?
ビタミンAとは関係なく、妊娠中によくいただくご質問に「妊娠中に卵を食べると、産まれてくる子供は卵アレルギーになりやすくなりますか?」というものがあります。
卵に限らず、妊婦さんがアレルギーを予防するために食事を制限することは好ましくないとされています。
様々な食材から色々な栄養をとることがすすめられており、現在のところ産まれてくるお子さんのアレルギーに影響するのは受動喫煙を含めた喫煙のみです。
妊婦は生卵、ゆで卵、温泉卵のどれを食べていい?
つまり、妊婦さんは卵を食べても大丈夫なのです。
むしろ、卵は完全食品ともいわれるほど、栄養が豊富な食品です。ビタミンCと食物繊維以外の栄養素はすべて含まれ、たんぱく源としても優秀なので、栄養バランスのとりやすい食材としておすすめです。
ただし、調理法には注意が必要です。
妊婦は生卵を食べていい?
卵の殻にはサルモネラ菌がついている可能性があります。
また、妊娠中は免疫力が落ちやすいため、食中毒にかかりやすくなります。
よって、生卵は食べないほうがよいということになります。
妊婦は茹で卵を食べていい?
卵に付着している可能性があるサルモネラ菌は、中心温度が75℃で1分以上加熱をすると死滅します。よって、しっかり茹でたゆで卵であれば食べても大丈夫です。
妊婦は温泉卵を食べていい?
温泉卵は、65-70℃の湯に卵を浸しておくと作ることができます。
この温度は、サルモネラ菌の死滅温度である75℃以下です。
サルモネラ菌は卵の殻だけについているのではなく、内部でも繁殖する可能性があります。
よって、温泉卵や黄身がトロトロの半熟卵は控えたほうがよい卵になります。
妊婦が気を付けたい卵メニュー
以上のことから、このようなものが妊娠中に気を付けたいメニューになります。
半熟のゆで卵
温泉卵
黄身が半熟の目玉焼き
ふわふわオムライス
親子丼
すき焼きの生卵
カルボナーラ
など
スーパーやコンビニの市販品でも同様です。
生卵を食べてしまったら
「うっかり卵かけご飯を食べてしまった!どうしよう…」という場合ですが、たとえ妊婦さんがサルモネラ菌の食中毒にかかってしまっても、胎児に感染することはないとされていますので、その点は安心してください。
ただし、妊婦さん自身が脱水症状など、母体の状態が重症化してしまうと妊娠の継続に影響が出る可能性もあります。
日本の卵のサルモネラ菌の汚染率は、0.003%程度といわれ、極めて低いものです。
ただし、生産業者の卵の洗浄やパック詰め施設の衛生管理が不十分なことが原因して、食中毒が発生した事例もあります。
生卵を食べてしまったからといって必ず食中毒にかかってしまうということはありませんが、やはり妊娠中は十分に加熱をして食べてもらいたいと思います。
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参考)日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省)
加熱調理と食中毒(食品安全委員会)
安心して生卵を食べられる国(食品安全委員会)